ARC が注目する2020年の主要な技術動向

Submitted by Shin Kai on Mon, 01/06/2020 - 15:49

 

年初に当たりARC は今年も、この一年にオートメーション領域で取組みや普及が拡大すると見込まれる新技術の動向に関する予測を発表した。この報告書はARC のアドバイザリ・サービス(AS)契約会員向けに提供されるARC Insight レポートとして発行されているが、新年に相応しいテーマであるので、ここに一部をご紹介したい。なおこのレポートの執筆担当者は、例年この技術動向予測を担当している米国在住のクレイグ・レズニック(Craig Resnick)とポール・ミラー(Paul Miller)の両アナリストであるが、彼らのほかに欧米からARC アナリスト7名がこの報告をまとめるのに参画している。

継続的な取組みテーマと新傾向

まず今年の「主要な技術動向」レポートが、昨年の同種レポートで採り上げた技術と多くの共通項目を持つことに特に異論はないであろう。この背景には、世界の製造業、社会インフラ関連のエンドユーザ企業が、日常業務から企業全体におよぶ破壊的な技術とアプローチを効果的に取り込む努力を継続していることがある。この取組みは、単に組織が存続するだけでなく、変化することが唯一の確実性といわれる現代世界で長期にわたって成長するための重要な要件ともなっている。

昨年の技術動向の予測では、技能伝承のための拡張現実(AR)、教育訓練とシミュレーションを目的とした仮想現実(VR)、クラウド/エッジソリューションの組合せの展開、IT/OT サイバーセキュリティの融合、およびデジタルツインに関して言及した。2020年には、これらの技術の実装展開に加えて、ARC は次の技術動向に注目する。

● 次世代の産業用IoTエッジソリューション(IIoT Edge 2.0)の展開

● サイバー・フィジカル・システム活用の増大

● オープン・プロセス・オートメーション・システムおよびその標準化の開発の加速

● 基礎的なデジタル化から全領域的なデジタル化に軸足を移すデジタル変革(digital transformation)

● システムエンジニアリング手法の産業用サイバーセキュリティへの適用

● その他

この順不同のリストは、もとより完璧な技術動向の網羅を企図してはいないが、2020年においてほぼ確実に産業、社会インフラ、スマートシティ領域に影響を及ぼす技術動向として注目に値する。では以下、そのいくつかの詳細を見てみよう。

産業用IoT Edge 2.0ソリューションの展開

産業用インターネット対応アーキテクチャのエッジ部がますます重要度を増している。これは主として、デジタル変革戦略の成否を決する上で、エッジが重要な役割を果たすようになってきているためである。エッジの役割は、初期には、タイムリーでクリーンなデータをクラウドベースのアプリケーションに配信することに重点が置かれていたが、今では、企業のアーキテクチャ全体における全く新しいエコシステムとして注目度を高めている。すなわち、現在では、ソリューションの設計者は誰でも、ただクラウド連携のためだけでなく、製造業が対応を迫られている遅延や、セキュリティや、コスト抑制、製造業環境の他の環境からの隔離などの課題に向けたソリューションとしてもエッジを有効活用している。

エッジコンピューティングのアプリケーションのなかでも、とりわけ機械学習(ML)を用いて提供される高価値の分析機能と人工知能(AI)により、データ処理がそのデータを生み出す装置の近くで可能となっている。この分野をターゲットとした投資が急増しており、そのことが、その重要性の増大を傍証しているといえる。IT とOT のサプライヤはいずれも、産業用IoTエッジのハード、ソフト、およびソリューションの新製品を次々に投入している状況にある。ARC はこれを「産業用 IoT Edge 2.0」と呼んでいる。その特徴は、使いやすさ、自己完結型(セルフサービス)、ターンキー操作において大幅な改善を実現する一方、普遍的なインフラに対しては実務成果と特定用途向けのソリューションを強調するところにある。今後の展開として、産業用 IoT Edge 2.0製品は、特定の成果を生み出すための用途に適合したターンキーソリューション色を一段と強めることが予想される。これは、従来型の単に「運用する」という考え方から、競争力を根本から見直したリアルタイムデータ分析の活用へと移行することを意味する。

サイバー・フィジカル・システム活用の増大

メーカは、成長市場である「スマート製品」の需要を満たすために生産を増加させる一方で、新しく一段と複雑化した製品やシステムの開発面と製造面での課題に直面している。これらの遂行には、コンピューティング(仮想)と物理(連続)の世界間の緊密な統合が求められる。これらの複雑性と統合の要件を満たすために、モデルベースのメカトロニクス・システム・エンジニアリング、組込みシステム設計の統合、物理世界の製品とシステム設計を検証するシミュレーションモデルを包含する高度なシミュレーションプラットフォームを使用して、より多くのサイバー・フィジカル・システムの展開が進むであろう。

サイバー・フィジカル・システムは、設計されたシステムあるいはメカニズムとして、コンピューターベースのアルゴリズムによって制御あるいは監視され、インターネットおよびそのユーザの両方と緊密に統合されている。サイバー・フィジカル・システム内では、物理コンポーネントとソフトウエアコンポーネントが深く絡み合い、AI とML の使用を通じて多くのインテリジェンスを取得する。工場の生産ラインや、エネルギ・ユーティリティのプロセスプラントや、スマートシティは、サイバー・フィジカル・システムによって自己監視、最適化、さらにインフラや輸送やビルの自律的運用の機能を実行する。

将来的に、サイバー・フィジカル・システムは、人による制御への依存度を低め、AI 対応のコアプロセッサに組込まれたインテリジェンスへの依存度を高めるようになる見通しである。

オープン・プロセス・オートメーション・システムとこれに関連する標準の開発が加速

今年はハード、ソフト、ネットワーク、セキュリティの進展や、グローバル競合とサイバーセキュリティリスクの増大、オートメーション技術からより多くの価値を引き出したいという要望を動因として、オープン・プロセス・オートメーション・システムとその関連標準の開発が加速される。

その一例が、エクソンモービル(ExxonMobil)、アラムコ(Aramco)、BASF、コノコフィリップス(ConocoPhillips)、ダウ(Dow)、ジョージア・パシフィック(Georgia-Pacific)、リンデ(Linde)などのエンドユーザ企業の協働による活動の推進である。これらの企業は、Open Group によって設立されたオープン・プロセス・オートメーション・フォーラム(Open Process Automation Forum: OPAF)の会員である。同フォーラムの設立は、相互運用性を支持し、技術の陳腐化を回避し、ビジネス価値の増大を実現するために、技術とシステムの適切な標準を特定し選択することを目指している。

そしてこれらの企業の協働の目標は、現行システムの技術的かつ商用的課題解決に役立つような標準ベースのオープンで相互運用可能でセキュアなオートメーションアーキテクチャの開発を加速することにある。

協働パートナー企業の使用に供するために最近開発されたテストベッドは、個々のコンポーネントと標準を対象に、パフォーマンスと運用を試験するための基盤として機能する。協働パートナーは、追加され試験されるべき新開発のコンポーネント、標準、およびシステム機能を指定し、優先順位を付ける。テストベッドの結果はすべての協働パートナー間で共有され、将来のソリューション開発の基盤を形成する。

設備/用途開発レベルでは、これと並走(および将来的に統合の可能性もある)するエンドユーザ企業主導の活動例として、フィールド機器の情報を伝送するためのNAMUR オープン・アーキテクチャ(NOA)標準がヨーロッパを中心に勢力を増している。NOAは、監視および最適化(M+O)を目的として制御システム内からクラウドまたはオンプレミス用途にフィールドデータをセキュアに伝送するために、標準化された情報モデルを使用している。

NOA の主な狙いは、M+O アプリケーションを統合するために必要となるコストと労力を抑制する一方で、リアルタイムの決定論的なプロセス制御・計装を確保することにある。これまでに、NOA の試行的デモ装置は、NOA の背後にある原則が間違っていないことを示した。また概念実証段階の成果としては、これらが市場で競合力を持つ製品化の可能性のある技術仕様と標準に展開できることを示している。